暗号資産を金商法体系に移管、不公正取引規制を全面強化

2026-05-01
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暗号資産、もはや「決済手段」の域を超える

 政府は10日、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案を閣議決定した。柱は四本で、①暗号資産規制の金商法への移管、②サステナビリティ情報の開示・保証制度の創設、③スタートアップ企業への資金供給促進、④有価証券に係る不公正取引規制の抜本的見直し―である。証券・暗号資産分野の改正が中心とはいえ、不公正取引規制の強化や犯則調査手続のデジタル化、顧客財産管理人制度の新設など、商品先物業界にも波及し得る論点が少なくない。日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の公表資料と併せ、要点を整理する。


情報提供・業規制・不公正取引、三層の規制体系

 第一の柱は、暗号資産規制の根拠法を資金決済法から金商法へ移すものである。2016年の資金決済法改正で決済手段として枠組みが整備された暗号資産は、国内取引口座数が延べ1,300万超、利用者預託金残高5兆円超(2025年10月時点)に達し、実態は投資対象に変質している。改正案は、暗号資産を有価証券とは別の金融商品として金商法に位置付け、発行権限を特定の者が有する「特定暗号資産」について、募集・売出し時の情報公表義務、定期情報・臨時情報の公表義務、払込額が一定以上の場合の監査証明義務を新設する。業規制面では、売買・募集・売出し・借入れを金商業に取り込み、登録制・兼業規制・業務管理体制整備義務・責任準備金積立て・自己資本規制比率を導入。併せて、暗号資産発行者関係者・取引業者関係者・大量売買者関係者を対象とするインサイダー取引規制(第171条の7~10)を新設し、相場操縦・風説の流布等に課徴金制度を整備する。無登録業者が取り扱う暗号資産の売付け等は原則無効とする民事効規定も置かれた。
 第二の柱は、プライム市場上場企業の一部に対するサステナビリティ情報の開示・第三者保証の義務化である。保証業者には登録制・業規制を課し、監査法人以外の参入も認める。
 第三の柱として、有価証券届出書の提出免除基準を1億円未満から5億円未満に引き上げ、少額募集(簡易様式)の上限も5億円未満から10億円未満へ拡大。プロ投資家向け勧誘の対象範囲も、移行手続未了ながら適格要件を満たす者を含める形で広げる。役員・使用人への株券等交付に係る勧誘は募集・売出しから除外される。
 商品先物業界にとって最も注視すべきは第四の柱である。公開買付け等に係るインサイダー取引規制では、対象者と契約締結中の者や交渉中の者等を関係者に追加。課徴金の算定方法も見直し、公表後2週間の最高値と公表前日終値の1.5倍のいずれか高い方を用いる。高速取引行為による相場操縦への課徴金は違反期間全体の利益等を対象とし、他人名義での不公正取引には1.5倍、名義貸しには違反者利得の2分の1を課す。他方、事実の報告・資料提出に応じた者には、合意に基づく減額制度(リニエンシー)を新設。実効性と協力インセンティブの両睨みの制度設計である。
 無登録で金商業を営んだ場合の罰則は「10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金」へと大幅に引き上げられ、犯則事件の範囲も政令で機動的に拡充される。外国当局からの調査協力要請に応じた出頭要求権限が整備され、証券取引等監視委員会の犯則調査手続には電磁的記録提供命令・電子許可状・電子調書等のデジタル対応規定が導入された。加えて、金商業者の業務廃止等に際し、顧客財産の返還に支障があると認めるときは「顧客財産管理人」を選任できる新制度も創設される。商品先物取引業者の破綻処理枠組みに照らしても、顧客財産の保全スキームの方向性として参照される可能性が高い。
 施行期日は原則として公布日から1年以内の政令指定日となる。ただし無登録業者への罰則引上げは公布から20日経過日、サステナビリティ開示・スタートアップ資金供給関連は2027年4月1日、犯則調査のデジタル化は同年10月1日と段階的に施行される。
 金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告(2025年12月10日)は、本改正が「暗号資産投資にお墨付きを与えるものではない」と明言しつつ、国際的なインサイダー規制整備(EUのMiCA、韓国の仮想資産利用者保護法等)への対応と、国内利用者保護の充実を両輪に据えた制度設計であることを強調している。商品先物業界としては、不公正取引規制強化・犯則調査デジタル化・顧客財産管理人制度という共通基盤の変化が、将来的に商先業法制の見直し議論へ連動し得る点を念頭に置くべきだろう。

(Futures Tribune 2026年4月21日発行・第3427号掲載)
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